コラム 『映画を作るということ』

コラム 『映画を作るということ』

映画脚本家 安楽悠作を支える
プロデューサー藤下 敦史から見た『映画を作るということ

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初めまして。僕はふだん地元の大学に通っている大学3年生です。ゼミが始まり就活に焦り、というよくある大学生活を送っていますが、思いがけず映画撮影に携わったのでその経験を少し振り返ってみます。きっかけは監督をした人に声を掛けてもらったことで、高校で出会った友人でした。同じテニス部だったことからその頃から仲良くしていました。夏休み明けにはみんな疲労骨折しているというなかなかハードな部活で、今思い出しても胃が痛くなります。一旦テニスから離れてしまうと少し寂しい気にもなって、体力も技術も落ちてしまいましたが、今でもたまに2人でコートへ向かいます。
彼は今までに2作品作っているのですが、1作目から一緒に撮影しています。映画が好きということは高校の頃から聞いていて、『桐島、部活やめるってよ』のDVDを貸してくれたこともありました。それぞれの登場人物からの視線が上手に描かれている最高傑作だそうなので、皆さんもぜひ一度ご覧になってください。後になって知ることになるのですが、『桐島』を見せて同じ感想を持った人だけを撮影の仲間に加えるという意外なしたたかさも発揮してくれました。

1作目の映画の撮影の話が出てきたのは大学に入ってしばらく経った頃でした。ある日彼から、自分で映画を撮ってみたいという話を聞きました。面白そうだと思ったのですが、それ以降しばらく動きはありません。構想がまとまるまで相当苦労したようで、結局それから1年近く経って撮影に至ることになります。同じくテニス部だった友人を主人公にした、登場人物1人のお手軽な映画でした。台本もありません。カメラになったのはiPhoneです。iPhoneで映画が撮影できるのか、と思われるでしょうが大きいスクリーンに投影しても意外と違和感はないものです。
そしてやってきた撮影当日は近所のパン屋や道路や踏切、友達の部屋などを借りて1日での撮影になりました。始発で向かい終電で帰宅するという詰め込みまくりの1日でした。行き当たりばったりな作品でしたが、完成後小さい映画館で上映してもらうということも叶いました。

この結果に喜んで、半年ほど経った頃2作目を撮ろうということになりました。この時も最低限の素材で撮影したのですが、1作目からは格段にクオリティが上がったように感じます。いろいろと新鮮な経験をすることが出来ました。
彼は人手不足のために脚本から撮影、編集までこなすのですが、その中でも得意とするのは脚本です。根っからの邦画ファンで日常の繊細なストーリーが大好きなようです。実際、頻繁に映画を観に行っており、会うたびに最近見た映画の話をしてくれます。
監督をした2作品ともに彼自身が脚本を一から考えていました。撮影前は僕にも何度も脚本を説明してくれました。時には撮影地を探して歩きながら話してくれることもありました。撮影地を探すのは監督本人がすべて行っていて、時々僕もついていくといった具合です。これまで地元で撮影することが多く、2人でぶらぶら歩きまわる楽しい時間でした。たまたま歩いた道を撮影に使うことも多く、こんなあっさりでいいのかという感覚ですが実際に使われた映像を観るとちょっと感動してしまいます。

脚本に関して時には僕の意見を言うこともありました。僕の意見が入ってしまって良いものか悩みどころですが、他に評価してもらう人がいないため、第三者の視点の役割を担うつもりで意見を交わしています。監督は自分で脚本を書きカメラを持つ、表現者です。対して僕はどちらかと言えば一般人の視点を持っていることがメリットで、また一般人の目線でいることを忘れないように心がけています。

脚本を書いた本人はどうしてもその世界に没頭してしまいます。その世界観の中では完璧な構成のストーリーに仕上がっているのですが、客観的にイメージしてみると、盛り上がりに欠けたり話がややこしくなるんじゃないかという部分も出てきてしまいます。作りこみすぎると理解が追い付かないんじゃないかという不安も出てきます。時間をかけて完成度の高い脚本を書いてくれた監督には申し訳ないですが、多少もの足りないぐらいまで削って、シンプルなものにしていくことも大切だという思いを伝えています。良い作品になるように頑張りたい、でもどこまで自分が介入していいものか、、、悩みながら撮影へと突入していきます。

藤下敦史
平成9年9月16日生まれ美術部だった中学校を経て、高校では硬式テニス部へ。安楽と出会う。大学進学後、安楽から映画の撮影に誘われる。以降2作品の製作で照明やスケジュール調整など雑用として活躍。身長188cm。

Photographer / Iwagoshi Daichi @g_____osiii
Direction / Umetani Hinako @1975tyiffy

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