【Culture Club Magazine vol.1】写真作家 高野ぴえろ

【Culture Club Magazine vol.1】写真作家 高野ぴえろ

大阪梅田の線路沿い。茂みに隠れたビルの一角に、ひっそりと佇むシーシャ屋。入るのに少し勇気がいるかもしれないが、ゆっくりと扉を押してみよう。緑のネオンが都会の音を包み込み、流れる時間はピタリと止まる。焦らなくていい、外の世界はまだまだ動いている。

Writer / Chihiro Imazu (BOY MEETS ART)

 

BOY MEETS ART Magazineとして連載してきたアーティストへのインタビュー。最高にクールで熱を帯びた彼らの生き方や想いを、皆さんにお届けしてきました。

昨年6月のカルチャークラブのオープンをうけて、BOY MEETS ART Magazineは新たに『Culture Club Magazine』として連載を再開します。


今回取材したのは、写真作家 高野ぴえろさん(26)。

大阪を拠点とした活動の傍ら、写真家たちのオフライン写真コミュニティPixCypherを運営。1/20-25の5日間にわたり、梅田の複数の場所での同時展示『梅田アートウォーク』を開催されます。

今回はインタビュアーとして、映画脚本家の安楽くんにご協力いただきました!

 

(左:安楽くん 右:高野さん)

写真作家「高野ぴえろ」

━━ 安楽:それではインタビューの方始めさせていただきます。そもそも、高野さんが初めて写真に触れたのはどのようなタイミングだったのですか?

 初めて写真に触れたのは4年前とかです。元々クリエイティブなことをするのが好きでした。中卒で働いてから、しばらくライターの仕事をしていました。それで、そちらの方でやり切ったというか、やりがいをなくした時期があって。新しくクリエイティブなことを趣味からでもいいので始めようと思い、手をつけたのが写真でした。

 ライティングをする上で、文章を書いて、写真も自分で撮れるということはとても効率が良くて、仕事にもメリットがありました。

━━クリエイティブという観点で、写真を選んだ理由は何だったんですか?

 一つは、写真には「制約がある」からです。まず写真の役割として、「記録すること」と、「芸術的要素」の二つがあると思うんですが、「記録する」という観点に関しては、圧倒的に映像の方が優秀になってきています。

 昔はどうだったかというと、映像なんてろくな画質がなく、写真でないと「記録」としての価値がなかった。けどどうやら最近では、写真と同じくらいの解像度を映像が持ってきていて、記録としての価値を高めてきている。

 そこで問われているのが、「写真の存在意義は何か?」ということです。映像の方が便利になってきた時代で、あえて写真をすることに僕は意味を感じています。そもそも写真をはじめたきっかけが、”仕事というよりも面白いことをしたい”ということなので、より高い壁の待っていそうな写真を選びました。

━━カメラマンではなく、写真作家としての道を選ばれたんですね。

 そうですね、依頼を受けて写真を取るのか、自分の撮りたいものを撮ってそれを売るのか、というその違いになってくると思うのですが、元々芸術写真を撮りたいというスタンスだったので、あくまでも純粋に撮りたい写真を撮りたかったんです。

━━写真の技術はどのように身に付けたんですか?

 独学です。写真学校も美大もスタジオ勤務経験もなかったので、写真作家たちが、どのような道を選んでいるのかを調べたりしてました。写真作家としてやるには、数年の修行期間が必要なので、しばらくはライターを辞めずに、趣味として写真を独学する期間をつくていました。その期間は名前を出した活動とかはほとんどやってませんね。

━━高野ぴえろとして活動を始めたのは?

 高野ぴえろとしてやっていくと決めたときは今から1年半くらい前ですね。自分が撮っている写真を客観的にみたときに、アマチュアレベルとしてなら、写真作家としての勝負ができると感じたので。その頃から高野ぴえろとしての準備を始め、SNS上で活動を始めました。

 

 

━━勝負ができるってのは特にこれという確信がありましたか?

 自分の写真のレベルが高くなってきたのもあるけど、それよりも大きいのは、” 写真の世界を知り始めた ” ということですね。

 写真史とか、最近の若手の写真家の動向とか、そもそも写真家という概念が変わり始めていて、どのようにこれから変わっていくのだろうという見通しが立ってきたというのがあって。それでは自分はこれからはこういう風に活動したらいいという可能性を十分に感じ始めてきたのが1年半くらい前です。

━━気になっていたのですが、「高野ぴえろ」という名前の由来は?

 くだらないんですけど、ライターをやってたとき、当時大学生で、教授に名義がバレてしまい、逃げたくて…(笑)学校に行くと講義で前のモニターに僕の記事が流れていて、なんだこれは…と。

 ちょうどその時にSNSで高野ピエロというアカウントを鍵垢で始めたんです。愚痴アカウントとして(笑)

━━え、そうだったんですか!まさかまさかの。そんなことあるんですね(笑)

「街を撮る」こと 

 

(高野ぴえろ展示 @カルチャークラブ 2020.08)

 

━━ここから、作品の方の話になるんですが、僕的に印象的であった「街と情緒」っていうテーマの作品。”街をとる”というのは、またどういう思いで?

 まずは街が好きだからですね。でもなぜ街が好きかはわからないです。僕が人の存在を感じない写真を撮ることはないです。人が写ってなくても、人工物の破片をいれるなどしますね。人が好きとか街が好きとか….なんか自分で自分のことはよくわかってないんです。(笑)

━━高野さんが撮影拠点にされている大阪には何か魅力が?

 大阪には良くも悪くも「合理的でない部分」があったりするところですかね。東京ではすぐなくなってしまうような、非合理的なものが大阪には残っている。例えば昭和ラブホとか。東京だとすぐに潰して新しいホテルにすると思うけれど、大阪には昭和ラブホってのがいっぱいある。そういった非合理的なところに魅力を感じているってのはありますね。

写真こそ、オフラインで。

━━昨年から、それこそコロナで活動なども制限されてきたかとは思いますが。

 コロナの影響はすごく感じます。ただ、なんというかコロナの流行のおかげで作家として非常に苦労しましたし、写真のメインの舞台はオフラインにあるから、オフラインでの活動が制限される中で本当にいろいろなことを考えることがありましたね。

 一つ言うなら、作家っていうのは ” 最後は1人である ”ということ。商業の世界では、大衆に受ける写真ってのはある程度の正解があるので、みんなでそこを目指す。

 しかし、写真作家っていうのは、自分の本当にやりたいことを、自分の心の奥底に聞いて、それを突き詰めるのでみんな違う方向をむいている。だから最後は1人。

 僕自身、コロナの影響でいろんな繋がりが急になくなった状態で作家活動を始めました。でも今思えば、逆にそれが良かったのかもしれない。1人で「自分の写真はどうあるべきなのか」を考える時間が多くなり、おかげで作家としての活動に腹をくくれたって感じはありました。

━━コロナ禍でも続けてこられた展示の開催ですが、高野さんが思う、オフラインにおける写真としての魅力は?

 写真をじっくりみてもらえる要素がオフラインには十分にあるというところですね。これは時代の問題ではあるけれど、TwitterとかInstagramのタイムラインでネット上で写真を見るという文化があるが、みんな1枚につき1秒も見てないと思うんですよね。

 やはり、ディスプレイよりもプリントの方がまだまだ写真としては優秀だと思っています。プリントでは、写真を” 質量 ”としてそこに感じることができる。二次元の情報ではあるけれど、そこには立体的な三次元の質量が存在している。安い紙で安いプリントで印刷すると、時間の経過や質量の重みを写真を手にとった人が感じることができるんです。

 そのような理由で、まだまだ写真表現に関していえばオフラインの方が優秀であると思いますね。

 

『梅田アートウォーク』という市場

━━そもそも、今回の展示会のきっかけは?

 一つは従来の写真表現のあり方に縛られずにやりたいことをしたいっていうところです。別にギャラリーに固執する必要があるのかどうか。近くの飲食店でいいじゃないかって、そんな具合に。

 もう一つは、コロナの影響ですね。好きな人たちがやっているお店は少なからずコロナの影響を受けています。そこに何か還元できることはないかと探していました。そのために、去年から毎月お店で展示をするということをやってきていて、次はお店同士の共有ができる状態を作り出したいと思い…。大変な時ではあるけれど、コロナの今の時期にやることが一番価値があるのでは、と思ったんです。

━━今回の展示場所であるカルチャークラブと、高野さんご自身との共通項は何かありますか?

 お互いがやろうとしていることが近いってところですかね。お互いに「従来の社会のやり方とか従来の文化のあり方」に興味がない。純粋に偏見も制約もなく、自分たちのやりたいことをしていきたいと思っている。その状態が似ていますね。

━━今回の展示では、複数の場所を回ってもらう形になると思うんですが、参加する人たちへのおすすめの鑑賞の仕方とかありますか?

 今回はβ版みたいなものになるので、まずはやることを大事にしてます。いずれは興味のないところには行かなくてもいいっていう感じにしていきたいんです。僕自身が、コミュニティー形態の運営の方が好きなので。

「梅田アートウォーク」という市場として、人気のあるところは残るし、人気のないところは廃れていく。実際に人が来るのかってのは、お店とアーティストの実力になるので、その実力を試す場所になってほしいですね。

 今回は6カ所になるので、全部回れると思うんですが、今後場所が増えてきたら、ぜひ行きたいところに行ってみてください。

━━最後に、高野さんは観る人に自分の作品をどう観てもらいたいですか?

 そうですね、大まかに二つあります。

 一つは、別に僕は写真史に名前が残らなくてもいいと思っているので、僕の写真を権威構造のなかに落とし込んで、この写真では賞が取れないとかいう評価には興味がないんです。ただ、自分のやりたいことに共感してくれる人の心に深く刺さればいい、そう思っています。

 そしてもう一つは、写真表現をする上で、ポジティブな物だけがアートではないということ。ポジティブなものを撮らないとアートにならないと思った瞬間に、それは自分のやりたいことではない可能性があるんです。人を不快にさせるものも、きっとアート。

 作家は心の中にあるものを突き詰めて、それがもしかしたらモラルに反していたとしてもそれは純粋に自分のやりたいことなんです。それこそが自分の求めるものであるならば、僕はそれを大事にしたいんです。

 

高野ぴえろ
大阪を拠点に活動する写真作家。ヌードからストリートスナップまで、独特の雰囲気の作品を撮り続ける。写真誌「UrbanWest」主宰。写真家たちのオフライン写真コミュニティ「PixCypher」を運営。
Twitter:@tp921
Instagram:@takano921
公式ポートフォリオ:https://takanopiero.com

 

安楽 悠作
映画脚本家。高校卒業後に高校の同級生であり、部活も同じだったメンバー数名で自主映画「ノイズキャンセル」を撮る。同作は第5回元町ショートフィルムフェスティバルに応募され、上映される。
平成31年、自主製作2作目となる「今を吐く」を撮影。
映像はもちろん、脚本や執筆など広く活動していきたいと述べている。

 

Interviewer / Yusaku Anraku @yousuck_anraku
Writer / Chihiro Imazu @__09.chi__

 


 

 写真表現をすること。心の中の抽象を、目の前に具現化させること。その孤独な戦いはきっと終わりを見ることもなければ、そう容易に諦めがつくものでもない。それでもまた、心が引っ張る方向に向かって表現を突き詰めていく。

 世間がどうだ、常識がどうだ。そんなの気にしている時間はない。そんなオーラがひしひしと漂う彼。その温度こそが、彼の持つ独特の雰囲気であり、表現に生きる1人の人間の存在をより一層際立たせる。

編集後記 / Chihiro Imazu

 

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