「まだ成功したくない。」ミュージシャンでデザイナー、なのに英語本を出版?独自の考え方で生きる新井リオの人生

「まだ成功したくない。」ミュージシャンでデザイナー、なのに英語本を出版?独自の考え方で生きる新井リオの人生

「純度を薄めず、そのまま表現したい。」
そう語る彼から溢れ出る人間味は、見る人に勇気や希望を与える。アーティスト新井リオさんは、音楽×デザイン×英語を自らの努力で身につけ、自分自身で新しい道を切り開いてきた。

彼は、ロックバンド「PENs+」のギターボーカルとして活動している傍ら、デザイナー・イラストレーターとして国内外で精力的に活動している。また文筆家として、自身も5年間書き続けているという「英語日記」勉強法を発信し、2020年1月には集大成となる著書『英語日記BOY』を出版。Amazonで本総合人気度ランキング1位を獲得した。まさにマルチに活躍するアーティストである。

そんな彼が表現する世界に魅了されてしまうのはなぜなのだろうか。

今回、そんな彼の生き方についてお話を伺った。

Writer / 平野 ひかる (BOY MEETS ART)


好きなものを探し続ける

━━平野:では本日はよろしくお願いします。

新井リオ:お願いします。

━━まず、ご出版された本(英語日記BOY)ですが、Amazon本総合人気度ランキング1位おめでとうございます!

ありがとうございます!本当に嬉しいです。

━━私も嬉しいです!ずっと応援していましたので…!

協力してくれた方のおかげなので本当に…ありがたいことです。

━━あの本、かなりお時間かけて作られていましたよね?

2年かかりました。初稿を1年半かけて書きましたが、出版直前で「やはり書き直したい」と思い立ち、一から作り直しました。表紙まで決まっていたのですが、編集者さんと社長さんに謝って、
「こういう理由で書き直した方が絶対良い本になります!」
とプレゼンしたら、認めてもらえて。
でも1年半もかけたのに書き直すと言ってしまったんで、責任とって1ヶ月で書き直します!と言いました(笑)

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それで、帰り道に
あ、これ東京の作業場で、作業時間を数時間増やすとかの次元じゃ終わらないから、カナダに行こう。」
と思い、次の日のカナダ行きのチケットを予約しました。
翌日からカナダのモントリオールに行き、親友の家に泊まらせてもらって、本当にほとんど1ヶ月で書き上げました。

━━なるほど…それって、なぜ東京よりカナダで執筆する方が良いと思われたのですか?

カナダの方がいいというより、自分が一番好きな場所に存在してる時の精神状況がすごく良いんですよ。

なんというか…小学校の時、お昼の時間に先生と一緒に給食を食べたりするじゃないですか。
苦手な先生が来たら、食べにくかったり、好きな先生だったら嬉しい、とか。あれと似ています。それぞれの ”心地いい” 食べ方というのがあると思うんです。

僕にとって1番心地いいのはやはりカナダでした。

東京は好きだし、家も好きなんですけど、「本を書く」のは凄まじいエネルギーが必要なことで。

東京では「エネルギーをかき集めて書く」ようなイメージですが、カナダでは「エネルギーをいただきながら書く」ような感覚で。カナダは僕にとっての源泉です。

━━やっぱり、大好きなものに囲まれるっていいんですね。

本当に毎日生き生きしていました。まさに水を得た魚です。

━━確かに教科とか関係なく、好きな先生の授業は頑張れた思い出があります!

そうそう!そんな感じ!そうなんですよ!単純にカナダが好きなんです!

あと文章を書くことも好きだし、英語を話している時間も好き。「自分が何を好きか」と「どうしたら好きに囲まれて生きていけるか」をいつも考えています。

━━自分の好きなものを集めたら今のリオさんになったという感じですかね。

そうですね。いつもキッズの気持ちです。

我慢した10代、そして。

━━リオさんのように自分の好きなことを発信している方ってそれほど多くないイメージがあるんです。みんな自分のやりたいことを我慢しているところがあるような気がしていて…。そこを比較すると、リオさんは何が違うんだろう?というのが私の純粋な疑問です。

ああ、でも10代のころ、僕もめちゃくちゃ我慢していました。

━━そうなんですか!それは意外です…!

うん、なんと言うか…ずっと変わりたかったんですよ。いじめられやすかったりもして、自分を出すことをずっと我慢してきました。

「こんなに好きなことを我慢せずに表現していいんだ!」と気づいたのはバンドがきっかけです。

━━バンドが、好きなことを発信することの原点だったんですねどのような経緯を経てこられたんですか?

15歳からギターを始め、高二でバンドを組んだのですが、この年頃で始めるバンドって、「これを将来の職にするぞ」とかあまり考えないじゃないですか。

まさに「楽しいからやる!それ以外に理由はない!」という感じで。楽しいからこそかなり真剣に練習はしていました。

すると、閃光ライオットというバンドの甲子園に出場したり、CDを出すことが決まって。20歳でカナダツアーにも行きました。

小中学生のころ、あれほど自分を出さないように努めてきて全てうまくいかなかったのに、高校生以降、好きなことを表現することに集中し始めたら色んなことがうまくいき始めた感覚がありました。バンドの経験を通し、「僕たちは、思っているよりも、好きなことを突き詰めながら生きていいのかもしれない」と思いました。

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━━好きなことして生きても良いと気づいてから、今のリオさんの仕事のスタイルになられたんですか?

いや、すぐに…とはいきませんでした。

音楽を始めたのは15歳ですが、英語とデザインを始めたのは19歳。そこから仕事として独立するまでに、さらに約4年ほどかかりました。始めるのが早かったかなとは思いますが、時間で考えるとそこまでスピーディーではないです。もっと短い期間で成功している人はたくさんいると思います。

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━━そうなんですね。見てる側は出てる記事を見るだけなので、そんなに紆余曲折を経ておられたとは知らなかったです…!

全然そうですよ、僕も時間かかりました。
でも、そんなに焦ってなかった気がします。

当時は休学をしていたとはいえ学生だったので、月に何十万円も稼げていないことに対しての後ろめたさがなかったんですよ。究極的に言うと、「月10万円」の収入でも「自分ってすごいかも…!」ってなれた。

変に「稼がなきゃ」みたいな焦りがなかったからこそ、目の前の勉強や練習にたくさん時間を割くことができたのかなとは思います。

━━なるほど。早い結果は求めていなかったということですね。

生計は立ったらいいけど、スキルに比例していくものだとわかっていたから、自分から営業をしたこともあまりなくて。

練習もかねてInstagramに毎日作品を載せて、それを気に入ってくれた人から仕事が来るのを待ってみました。

━━焦りがなかったというのはいいですよね。私含めなのですが、今の人たちって、すごく周りの人たちの行動力や成長速度を見て焦りを感じてしまう人が多いと思うんです。

うん、よくわかります。

僕も、理想が高いので、現実との差に落ち込むことはめちゃくちゃあります。

でも、そもそも僕の今思い描いている理想って、なんとなくですけど、33歳くらいにならないと叶わない理想だと思っているんですよ。実力と経験値を考えると。

だとしたら、今叶っていないことに対して、もう納得なんですよ。

むしろ、来年とかに叶っちゃったら、怖い。
だって、あと8年くらいかけて養っていかないと身につかないようなスキルを持って叶えたいゴールなのに、来年にラッキーで叶っちゃたら実力不足のまま叶っちゃうことになる。

変に名前だけが広まって、実力が伴っていないことが明らかになる方が怖いなと思います。

ちなみに今回出す本『英語日記BOY』に関しては、僕が出せる英語学習法の理想形が完成したのでどんどん広まってほしいと思っています。

でもイラスト・音楽における個人のアーティスト的キャリアとしては、まだ成功したくないくらいに思います。

━━え!すごい!まだ成功したくないって言える方って中々いらっしゃらないから驚きました(笑)

すごく青臭いことを言うと、もっと魅力的になってから世に出たい。

でもこれは完全なる自分の問題なので、「同年代のAさんが自分より先に成功した」みたいなニュースに焦ることも、本当に、心の底からないです。

Aさんが友達だったらむしろ超喜ぶと思う。みんなが幸せなのが一番いいから。僕、まだ理想を叶えきれてはいないけど、多分、すでにある程度幸せなんですよ今。何かを目指せているだけで。

自分型RPG

というか、基本的には毎日「自分ってつまり、人生を通して何ができるんだろう」ってことしか考えていないのかも。

ツイッターもインスタも、本の宣伝や英語日記の更新で使ったりするけど、友達の投稿とかあまり見てない…すみません!(笑)

━━自分に関心があるから、きっと他のことは気にならないんですね。ニュースとかもあまり見られないんですか?

英語の勉強もかねて海外のニュースはアプリで読みますけど、家にテレビがないので日本のニュースはほぼ見ないです。だから『英語日記BOY』がAmazonの人気度ランキング1位になった時も、2位がおっさんずラブというものだったんですけど知らなくて。あとからあれは有名なやつだよと友人が教えてくれました。

━━なるほど…!

自分にすごく興味があるのかも。

あんなに何にもできなくて、弱かった10代の自分が、ギターを弾けるようになっていたり、英語が話せるようになっている事実が、面白いんですよ…!ゲームみたいな感覚なのかも。自分の体でゲームをやっているような

━━面白いですねその発想!

だから勉強が好きなのかも。

多分ポケモンでいうモンスターのレベルアップくらいの感覚で勉強しています。

僕たち、色々な局面でつい真剣に考えすぎちゃうことがあるので、人生をゲームと思うくらいでちょうどいいのかもしれません。仕事とか生活って、想像以上に、失敗してもやり直せると思うんです。

━━主人公が自分のロールプレイングゲーム、という感じですね!

たしかに!ゲームの中でもRPGですね、まさに。
だとしたら僕は、自分自身の攻略法と、このRPGのストーリーについてずっと考えているんだと思います。

その結果、このタイミングで「英語日記の本を出す」ことにもしっくりきたんですよね。もう5年間真剣に勉強したから。英語力でいえばまだまだ伸びるはずですが、「勉強法」自体はもう一生「日記」だなと確信があるんです。これが完成形。だから、本にしました。
RPGでいうところの「英語篇:攻略本」完成!ですね(笑)

新井リオの
「人」に対する価値観

━━リオさんとお話して感じたことで、「自分の中で目標がある人は、人と比べないから人のことを素直に全力で応援できるんだな」思いました。
私は自分がうまくいっていない時に人が隣をすっと抜いていく姿を見ると、自分のできなさに泣きたくなっちゃうんですよね(笑)

うん、それも超わかります!!

僕も10代の頃はそうだったと思います。
でも、今成功していようが成功していなかろうが、まず人間として僕たち平等じゃないですか。

━━平等とは、何が”平等”なんですか?

例えば生まれた時期が少し早いだけで、態度・言葉遣いを全て変えなければいけないのってよく考えたらおかしいじゃないですか。

人間としてのリスペクトとして誰に対してもまずは敬語で話しますけど、親密になれば年齢に関係なくある程度フランクに接していいはずだし。

━━素敵な考え方ですね…!それはカナダにいる時に気づかれたんですか?

気づいたというより、なんとなく今までモヤモヤしていたものがクリアになった感じですかね。

「この考え方でいいよな」とは前から思っていたんです。

━━ずっと持っていた「人に対して平等に接する」という考え方がカナダでは普通だったから、「この感覚は間違えてなかったんだ!」とカナダで確信を持てたたということですね。

そう、そんな感じ!だから僕はかなり親しくなって信頼関係が築けていることが確認できれば年上の人でもタメ口で話したりするし、
逆に年下の人にも最初は敬語で話しかけつつ、仲良くなれば「敬語じゃなくて大丈夫」と言います。年齢が理由で気を遣われるより、人間としてその人と親密になれる方がいいなと思います。

人間

━━リオさんの魅力はその作品を通して見える「人間味」なのかなと思いました。その共感できる文章で救われた人はたくさんいると思います。

嬉しいです…!
僕は人間的なことをずっとやっていたいんです。

だから文章を書くにしても、
「はいみなさんこんにちは。新井リオです。今日は〇〇を紹介します。」
みたいなのじゃなくて…

「今日はやばい…!」みたいなのから始めたい(笑)

━━それこそ人間味が溢れていますよね(笑)

だって、普通に生きてて僕が、
「はい!皆さんこんにちは新井リオです。」ってならないじゃないですか。
でも、「今日はやばい…!」とはなるじゃないですか(笑)

それをそのまま伝えたいから。
全てにおいてですよ。文章音楽イラストデザイン…

全てにおいて、純度を薄めずそのままの状態で表したい。素でいたい。

━━確かに、リオさんの文章は飾らない感じがします。そのままって感じ。文章からリオさんの姿が見えます。

ええ!嬉しい…!実際にそうやって伝えてもらえるの、本当に嬉しいです。安心するというか。

僕は、濃縮もせずに、還元もせずに、そのまま絞った純度100%オレンジジュースを、氷も入れずに出しました!みたいなことをしていたいんです。

でも、飲んだ人が「あれ?これ果汁50%かな…?」って思う可能性もあるじゃないですか。実際にどう受け取られたかって、伝えてもらわない限り本人には届かない。

だからこそ、実際に飲んでくれた人が「これ…濃縮も還元もせずに、まじで絞ったやつじゃないですか?!」みたいなレスポンスをしてくれると、嬉しい(笑)

特にこの純度ってネットを通すと薄まりがちですけど、会ったことのない全てのフォロワーの方にもこれが伝わっていたらいいなと思います。

━━多分伝わっていると思います…!
機械的じゃなくて、人がいるという感覚、つまり、文章を通して人を感じられるからこそ読者は魅了されるんだと思います。
だから、SNSで見るリオさんのイメージとご本人は全く同じです(笑)

本当に嬉しい!でもイベントとかでもよく言ってもらえるかも。

僕はこういう人間なんですよ。(自分のイラストを手に取る)

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僕を絵にしたら、こんなイラストになって、文章にしたらブログのようになって、音楽にしたら「PENs+」になる。

理想は、僕の絵だけをみて、「あ、これ描いた人はこういう人なんだろうな」って分かってもらうことですね。対面で会った時に、「ほんとにあの絵の感じと同じ人だ…!」ってなったら一番クールだと思うんですよ。

━━かっこいいですね…。やっぱりアーティストって自分の生き方とか感性を表現して作品にするんだなと感じました。それで生きてらっしゃるんだって。

確かに、その純度が高くなったのは、自分がアーティストだという自覚をこの2年くらいで持つようになったからかもしれない。

まだ大学1年生の時は就活とかも考えてました。でもカナダツアーが決まったり、デザインでお金をもらえるようになった経験を通して、「そもそも自分は表現をすることが好きであり、向いているのかもしれない」と改めて感じるようになりました。

そこで初めて「だとしたらアーティストの自覚をもっと意識的に持とう」と思いました。細かいところですが、人前に立つときはなるべく「緊張しています」と言わないとか。

表立って言うのも恥ずかしいですが、文章・絵・音楽で人を楽しませ救うエンターテイナーとして振舞うことに全ての生活を捧げたい、という覚悟が今はあります。

━━リオさんのアーティストとしての意識がより人々に共感を生んでいたんですね…!本日は貴重なお時間ありがとうございました!


リオさんは終始、「人間」という言葉を使われていた。

デザインや音楽、文章に人柄が現れるアーティストは部屋のインテリアでさえもその人柄が現れるらしい。
「こういうのも全部僕です。僕は人間ですからね。」
そう言って微笑む彼の姿は、アーティストとしてあり続けることに喜びを感じているようだった。

新井リオ
デザイナー / イラストレーター|1994年東京生まれ。
立教大学社会学部卒。
19歳から独学で英語とグラフィックデザインを学ぶ。
2016年カナダに渡りフリーランスに。
Sony Music Shop / TOWER RECORDS / 
ヴィレッジヴァンガードとのコラボグッズ、雑誌WIRED / 
EYESCREAM web連載イラストなど。
5年間書き続けた「英語日記」勉強法を
つづった著書『英語日記BOY』(左右社)が、
Amazon本総合人気度ランキング1位を記録。
バンドPENs+のボーカルとして日本で4枚のCD、
アメリカで1枚のレコードをリリース。


WEB : https://arairio.work/
Twitter(@_arairio) / Instgram(@_arairio)
新井リオさん出演のイベント情報

・1/25(土)19:00~  東京@Readin’Writin’
『英語日記BOY』メイキング・エピソード
・1/26(日)13:00~  東京@青山ブックセンター
『英語日記BOY 海外で夢を叶えるための英語勉強法』刊行記念
新井リオ×辻愛沙子×牧野圭太 トークイベント「クリエイティブなアイデアはどう作るのか?」
・1/30(木)19:00~20:30  大阪@READING STYLE ABENO
新井リオ『英語日記BOY』刊行記念イベント 留学・参考書いらずの英語勉強法レクチャー&サイン会
・ 2/2(日)13:00~  大阪@梅田TSUTAYA MeRISE
英語日記BOY新井リオと語る「クリエイターとしてフリーランスになるために独学でできること」

 

Target / Rio Arai
Interview & Photograph / Hikaru Hirano


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